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きな特徴は処理をした部分以外は燃えないから、前の方式のように勝手に燃え拡がらないことである。その意味で、この方法は同じ燃焼という現象を使った焼却法でも」種の制御された燃焼を利用していると言ってもよい。では、どのような薬剤を使えば、どんな仕組みで、燃えない油を燃えるようにすることが出来るのか、最も工夫のいるところであるが、ムース化油についてのこのための方法は次節および第2章に詳しく述べる。
最後の外部加熱方式というのは、トーチのような火炎その他の強烈な熱源で流出油を加熱分解して除去しようとする方法である。言うまでもなく、そのままで燃える油に使う必要はないから、燃えない油専用でその点ムース化油の防除には向いている。しかし、加熱の熱源に何を用いるのがよいかは別にしても、海面に浮いた油では熱が海水に多量に奪われるため焼却できず、適用範囲が海浜や岩場に限られるうえ、広い面積には適用しにくいなどの難点がある。人的費用を含めると経済的にも決して安価でないと見られる。
結局のところ、既に燃えない状態になっているムース化した流出油の除去の方法としては、現実には現場処理しかなく、そのためには予め化学処理して後に焼却する方式が最もよいのではないか、これが本法をこの研究で取上げた理由であるが、これにも欠点はいくつかある。その第一はいずれにしても、この方式は焼却法であるから、それに起因する炎からの熱放射、煤の発生、明るさなどが適用に当たって問題になる。これらは燃焼による焼却法を採る限り、避けられないものである。ただ、これらに関しては、この焼却が環境保全のうえで必要な緊急避難的な行為で、また焼却に要する時間は短いことを考えるとき、慎重な注意さえ揃えば許容される範囲に入るものと考えられないか、人海戦術によった場合の長時間にわたる生物や漁業への被害を含めた汚染と比べて、そのいずれを選択するかであり、また並外れた汚い作業を強いるか、著しく大きな社会的費用の損失をいかに小さくするかの選択の問題でもあろう。
なお、ここで用いる薬剤の海洋生物への毒性については、化学処理のためにどのような種類のものを使ったとしても、燃焼という高温の過程を経ているため、その薬剤そのものの毒性よりは原理的に著しく減少すると思われる。

 

 

 

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